校長室便り

令和6年度 校長室便り⑧

  • 2024年10月15日
  • 校長室便り

令和6年度 学校創立記念日 学校長挨拶

85回目の学校創立記念日を、一部リモートでありますが、一堂に会して、創設者の名前の残る大坪記念ホールで開催できることをうれしく思います。宮崎学園中学校・高等学校の歴史については、この後、動画で詳しく流れますので、私からは略歴と、ちょっとした「こぼれ話をしたいと思います。
 創設者であり、初代理事長である大坪資秀(おおつぼ すけひで)先生は、昭和14年(1929年)に私財を用いて(ご自身の資金で)女子教育のための学校を現在の大工町に設立いたしました。もちろん、太平洋戦争以前の話です。

★ここで「こぼれ話 その1」です。
 昭和20年7月1日午前10時過ぎ、宮崎県の上空にアメリカの爆撃機が飛来します。その当時、高等学校は別の場所にありましたが、その敷地、校舎に数十個にのぼる小型爆弾が投下され、本館2階建て校舎、普通教室、家庭科室、音楽室をはじめ大きな被害を受け、運動場の至る所に大きな穴が空いたとの記録があります。幸い生徒と教職員は疎開しており人的な被害を免れたようです。
 さらに、昭和20年(同年)9月18日には、後に枕崎台風として記録に残る大きな台風が宮崎県を襲い、空襲で傷んだ校舎は倒壊し、本館も全壊しています。
◆先日も宮崎空港で不発弾が爆発しました。8月下旬には宮崎市内を中心に被害をもたらした台風もありました。 
 歴史はどこか遠くに存在するものではなく、身近な生活につながっているものだと感じた次第です。戦争そして自然災害から立ち上がり、現在、この地に宮崎学園の姿があることを、当時の生徒と教職員の苦労を鑑みると、感銘を受けるばかりです。

話を戻します。終戦後、国の学校制度の変更に伴い、学校名を変えながら、昭和30年(1955年)に宮崎女子高等学校となり、「女子高」という愛称で48年間、宮崎県の女子教育の、まさに中心として多大なる貢献をしてきました。

★ここで「こぼれ話 その2」です。
 昭和35年5月12日のこと、宮崎県の青少年赤十字教育振興大会が本校で開催されました。その際に、皇室である高松宮妃殿下が御来校されます。御来校記念にと、泰山木(大盞木―たいさんぼく:モクレン科の白い花)という花木をお手植えなされました。モクレン科の樹木で、白い盞(おわん)のような花を咲かせるそうです。現在、正門南側に6~7mほどの高さまで成長しています。
 高松宮妃殿下が本校の一室で御休憩なされた際に、幾人か在校生(女性)が接遇の役目をいただきました。その当時も礼法指導が徹底されていたため、見事な接遇だったようです。
 その当時の生徒の一人は、卒業後、画家として活躍され、現在は、ご高齢ですが、元気に東京で暮らしておられます。

◆先日、その方から連絡があり、絵画を寄贈したいとの申し出がありました。同窓会である「みどり会」のご尽力もあり、この大坪記念ホールの1階ロビーに飾ることにしました。既に設置が終わっていますので、ぜひ見て欲しいと思います。

話を戻して、平成15年(2003年)男女共学とともに、学校名が宮崎学園高等学校になりました。さらに、平成21年(2009年)に中学校を開校し、現在の宮崎学園中学校・高等学校となりました。今年度で、高校は21年目、中学校は15年目を迎えています。
 創立以来85年という長きにわたり、本校の卒業生は4万人を大きく上回り、様々な分野で活躍されていますし、宮崎学園は宮崎の地に深く根ざし、地域に愛され、地域になくてはならない学校となっています。

さて、創立記念日に当たり、改めて、「学校法人 宮崎学園」について紹介と確認をしておきたいと思います。学校法人宮崎学園は、生徒の皆さんが在籍している中学校及び高等学校以外に、4つの学校を運営しています。今日、この日に、どこの学校でも創立記念式典を行っています。
 まず、4年制大学である宮崎国際大学があります。宮崎国際大学は、国際教養学部と教育学部の2つの学部を備え、昨年度からは大学院も設置しています。
 この式典の冒頭に、黙祷を捧げました第2代理事長である大坪久泰(おおつぼ ひさやす)先生が、30年前、宮崎から世界へと羽ばたくグローバルな人材育成を目指し開学した大学で、英語で行うリベラル・アーツという、当時では先進的な大学教育をスタートさせました。

★ここで「こぼれ話 その3」です。
 リベラル・アーツとは(米国カレッジ・大学協会定義)、個人の能力を開花させ、困難や多様性、変化へ対応する力を身に付けさせ、科学や文化、社会などの幅広い知識とともに、より深い専門知識を習得させる学習方法のことをいいます。(この学習法には、3つの要素を育成することが重視されています。「クリティカルシンキング」「道徳心・市民性」「知識の汎用性」の3つです。特に「クリティカルシンキング」は、物事や情報を従順に受け入れるのではなく批判的に捉えて、多様な角度から検討し、論理的・客観的に理解するため深く考え抜く思考法のことです。)

◆現在では、多くの大学がリベラル・アーツを取り入れていまし、高校でも探究的な学習で展開される学習法でもあります。未来を創造していく生徒や学生には、必要不可欠な学びとして重要視されています。この学びを30年以上前に取り入れた大学教育を始めた大坪久泰先生の先見性に敬意を表したいと思います。

話を戻します。そして、宮崎女子短期大学を前進に持つ宮崎学園短期大学があります。
 短大には保育科および現代ビジネス科を設置していますが、保育科は2年で学ぶこともできれば、働きながら、実践をしながら3年間で学びを深め保育士を目指すこともできる教育課程が設置されています。さらに、幼稚園と保育所の両方の機能を持つ幼保連携型認定こども園である、みどり幼稚園と清武みどり幼稚園の2つの短大付属幼稚園があります。あわせて6つの教育施設があり、これは宮崎県内で唯一の総合教育機関であり、かつ最大の学校法人として存在しています。
 そして学校法人全体の目標として、礼節・勤労に基づく「教育力・社会貢献力 日本一」を目指して、それぞれの学校の歩みを進めているところです。
 私たち一人ひとりがその一員であることを常に自覚し、誇りある教育活動に邁進していきたいと思います。

生徒、教職員の皆さん。
 建学の精神である「礼節・勤労」は、いつも見聞きしていることでしょう。そこに込められている願いは「地球が平和で、すべての人が尊重し合う社会」 そのような社会が築かれていくことです。この願いは、同じ学園内で学ぶ学生、高校生、中学生、園児の教育において一様に貫く精神として流れています。
 「礼節」 人とのかかわりあいの中で、互いを思いやり、自他を尊重すること(思いやりと尊重)「勤労」 何事においても意を尽くし、力を尽くして努力すること(意(心)と努力)

生徒、教職員の皆さん。建学の精神である「礼節・勤労」を日頃の生活の中で発揮し、さらに充実させていきましょう。私たちが、卒業生やこれまで在職された教職員、地域の方々、そして宮崎学園を応援していただく皆様の思いや願いを、言葉としてだけではなく、行動として引き継いでいくこと、そして、私たちは、この宮崎学園でお互いに学び合い成長する者として、先人の築いてこられた伝統をしっかりと受け継ぎ、さらなる発展に繋いでいくことを、創立記念日のお祝いとともに、心に深く刻みましょう。以上で、令和6年度、学校創立記念日挨拶とします。

令和6年10月11日
学校法人 宮崎学園  宮崎学園中学校・高等学校 校長  押方 修